閲覧期間:2022年8月27日 (土)〜2022年9月11日 (日) 講師: ・奥山 徹 [明治薬科大学名誉教授] ・馬場 正樹 [明治薬科大学臨床漢方研究室] |
シルクロードにロマンをかたる ~正倉院はシルクロードの終点である~
くすりの道・シルクロードと世界の医学
講師 | 馬場 正樹 [明治薬科大学臨床漢方研究室] |
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要旨 | 紀元前2世紀から18世紀、約二千年の長きにわたり、東洋と西洋を繋ぎ、経済的・文化的・政治的・宗教的に影響を与えあった交易路「シルクロード」。「絹の道」は同時に「くすりの道」でもありました。今回は、明治薬科大学の明薬資料館収蔵の資料から、くすりの道としてのシルクロードを見ていきます。
本学資料館収蔵で現在一般公開されているマテリア・メディカ ウィーン写本のレプリカ。『マテリア・メディカ』はローマ帝国期の紀元77年ごろ、ペダニウス・ディオスコリデスにより記された全5巻からなる本草書であり、以来多くの写本が作られ1500年近くの長きにわたり西洋医学の根幹をなすものとして語り継がれてきました。また、本書は多数の言語に翻訳され、印刷技術の発達とともにさらに普及し、アラビア世界にも伝わり、ユナニ医学の基として発展していきます。さらに、西洋では錬金術から化学の進歩とともに、薬効成分の探求から単一成分の西洋医学へとつながっていきました。 一方で、東洋医学の三大古典の一つである神農本草経は、紀元2~3世紀に成立したとされ、こちらも現代に伝わり漢方や中医学の発展に多大な貢献をしています。また、東洋では東洋医学的理論に基づいた生薬の配合による漢方薬が発展し、全人的に俯瞰する東洋医学独自の方向へと向かいます。 洋の東西で、生薬から単一化合物へと向かった西洋医学、生薬をさらに配合して漢方薬を成立させた東洋医学と、その方向性は真逆であったことは興味深いものがあります。 一方で、これらの書物に収載されている天然薬物・生薬は、それぞれの地域に産するもののみならず、中央アジアや中東に産するものも含まれており、その効能は洋の東西で若干異なるものも含まれますが、同じような記述がなされているものも多くあります。これらはまさに、洋の東西がシルクロードによりつながれた証左であり、また、前の演者が紹介しておりますが、その一部は天平時代に我が国に伝わり正倉院薬物として現代にまで伝わっています。 シルクロードが果たした役割は、文化や物資の交流のみならず、くすりの道でもあり、それは現代医療にも少なからず影響を与え続けています。 |
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略歴 | 1993年 明治薬科大学薬学部衛生薬学科卒業 薬剤師 1999年 明治薬科大学大学院薬学研究科博士課程修了 博士(薬学) 2014年 明治薬科大学天然薬物学研究室 准教授 2017年 明治薬科大学臨床漢方研究室 准教授 明治薬科大学薬用植物園長、図書館資料館運営委員会委員など 清瀬市健康大学講師(2015)、東久留米市市民大学中期コース講師(2021)、清瀬市廃棄物減量等推進審議会会長(2021~) |
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補足資料 |
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