和漢医薬学の基礎と臨床の橋渡しを推進する

和漢医薬学会

第37回 和漢医薬学会学術大会「市民公開講座」

2020年10月14日 Categories: 市民公開講座

開催日:2020年8月29日 (土)〜9月6日(日)
講師
白木 公康 [千里金蘭大学]

新型コロナウイルス肺炎の特徴とその治療薬アビガンの開発

講師 白木 公康
[千里金蘭大学]
要旨 新型コロナウイルス感染症の病原ウイルスは、SARS-CoV-2と呼ばれ、その感染症はCOVID-19と呼ばれる。鼻かぜを主体とするヒト呼吸器コロナウイルスと異なり、致死性肺炎を起こす特徴がある。
新型コロナウイルス感染者の約80%肺炎が無いかあっても軽症で、15%は重症肺炎で5%がICUの管理が必要な重症の肺炎となる。
この肺炎はコロナウイルスに対する免疫応答による肺炎に加えて、RNAウイルスであるコロナウイルスの感染細胞内のウイルスRNAがToll-Like Receptor(TLR)に認識され誘導されるサイトカイン(IL-1,IL6, TNF-α等)による炎症が上乗せされるので、重症肺炎となる。
その治療薬であるアビガン(Favipiravir)は、富山化学内で種々化合物を各研究グループで活性の検討を行う中で、アビガンは江川裕之氏らが合成し、古田要介氏らが抗インフルエンザ活性を見出し、著者らが富山医科薬科大学、感染動物での治療効果を確認したことで、抗インフルエンザ薬としての開発が始まった。
このアビガンは海外に助けられて、その真価が評価されていった。まず、米国のグループが新型インフルエンザH5N1に有効性を認め、米国国防総省の援助で治験が推進され、国内でのインフルエンザの治験を経て、2014年3月に抗インフルエンザ薬として承認された。そのころ西アフリカで流行していたエボラ出血熱の動物モデルで有効性が英国とドイツで確認され、フランスを介して、ギニアでエボラウイルス感染症の治療に使用された。そして、COVID-19に関しては、中国が国を挙げて、既存薬を含め治療薬の候補を選択し、有効性が確認された。既存薬では薬物動態や安全性や副作用が知られているので、薬効濃度がわかれば、有効性の推測が可能であった。
アビガンについては、妊孕性の問題があるが、有効性の情報に基づき、COVID-19の臨床研究として使用されてきた。そして、臨床試験で有効性も確認された。
このように、アビガンは開発段階から、海外によって、その真価を評価されてきた。アビガンは致死性RNAウイルス感染症に有効で、耐性ウイルスができず、流行の最初から最後の患者まで有効に治療できる。このようなアビガンが使われることは、日本にとっては不幸な流行があることを意味するが、「あって良かった」といわれると救いでもある。
補足資料